公益財団法人 廿日市市芸術文化振興事業団│懐かしの映画上映会『成瀬巳喜男監督特集』

ウッドワンさくらぴあ
0829-20-0111
はつかいち美術ギャラリー
0829-20-0222
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌平日)

公演詳細

懐かしの映画上映会『成瀬巳喜男監督特集』
開催日
2020年11月18日(水)〜 2020年11月19日(木)
開演時間
【各回完全入替制】
※開場は各上映開始時間の20分前
■11/18(水)
10:00~11:56「流れる」
12:40~14:18「おかあさん」
14:50~16:38「乱れ雲」
17:10~18:47「めし」
■11/19(木)
10:00~11:37「めし」
12:20~14:08「乱れ雲」
14:40~16:18「おかあさん」
16:50~18:46「流れる」
※新型コロナウィルス感染予防対策の為
 入場に時間がかかる場合があります。
 時間に余裕を持ってお越しください。
会場
ウッドワンさくらぴあ 大ホール
料金

全席自由(税込) 1回券500円、4回券1,500円
※1枚で、全8回のうち1回ご覧いただけます。
※4枚券は4枚綴りになっております。
複数人で分けても使用できます。
※さくらぴあ倶楽部会員100円引。
(2枚まで。当日会員証をお持ちください)
※高校生以下無料。
(入場の際学生証をご提示ください)
※ポイント対象外。
ウッドワンさくらぴあオンラインチケットでの取扱いはありません。
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※客席内での飲食は出来ません。予めご了承ください。

■チケットは当日販売のみ
(当日9時から2階当日券売場にて販売します)
■チケット購入時の緊急連絡先の記入にご協力ください。

『流れる』

出演:田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子 ほか

隅田川畔の花柳界・柳橋を舞台に、置屋の女中として雇われた女の眼を通して、零落する花街の姿を描いた幸田文の同名小説を、田中澄江、井出俊郎による脚色により成瀬巳喜男が映画化。前年『浮雲』にてベストワン監督となった成瀬が、当代を彩る女優陣の火花散る競演を得て、芸者として生きるさだめを抱えた女たちのけなげさやエゴを存分に引き出し、代表作の一つとした。置屋の女将を務めながら男への未練を断ち切れない山田五十鈴演じるつた奴に、彼女を芸者として鍛え上げた地元有力者の女将お浜が絡む場面は、原作にはあまり描かれていないが、成瀬に請われ18年ぶりの銀幕復帰となった栗島すみ子による、やさしさと冷徹さを兼ね備えた存在感により、スリリングな緊張感をもたらしている。また、つた奴の娘・勝代を演じた高峰秀子、老齢にかかった芸者のアクを見せた杉村春子とともに、映画全体の距離感を作り出した女中役・梨花(お春)の田中絹代の演技も見逃せない。女優たちの艶とケレン味が、座敷の場面を一つも描かずして、セットと実景を見事に結合させた空間構成のなかから引き出され、現実の変化とともに確実に失われつつある時代への郷愁を、艶やかなモノクロームの画面に見事に定着させている。「キネマ旬報」ベストテン第8位。

『おかあさん』

出演:田中絹代、香川京子、岡田英次、片山明彦 ほか

この作品は当時、全国の小学生から募集した作文をまとめた「おかあさん」をもとに、女流脚本家の第一人者、水木洋子が脚本化したものである。戦災で失ったクリーニング店をようやく再開したのもつかの間、夫は過労で病床に伏し、病弱な長男は息を引き取った。娘二人と幼い甥をかかえて懸命に働く母。そんな生活ぶりを長女の目を通して描いたこの作品は、日本映画のリアリズムの伝統を踏襲したものといえよう。淡々とした生活描写のなかで、母と店を手伝う昔の使用人との噂への反応や、密かに芽生える恋心など、思春期の少女の微妙な感情が、成瀬監督の丁寧で緻密なカットの積み重ねにより描かれ、独自の世界を築き上げている。主演の大スター田中絹代がこの翌年、初めての監督作品『恋文』を演出することになった時、成瀬監督に指導を仰げと助言をしたのは、溝口と小津の両巨匠であった。「キネマ旬報」ベストテン第7位。なお、同監督の『稲妻』も同年の第2位を獲得している。

『乱れ雲』

出演:加山雄三、司葉子、森光子、浜美枝、草笛光子 ほか

事故とはいえ車で人をひき殺した青年商社マン、その事故のせいで突然エリート役人の夫を失った女。この二人の微妙に揺れ動く心理を、成瀬巳喜男監督は淡々としたカットを積み重ねることで的確に描き出していく。普通ならば交わることのない二人の関係を、『憎いあンちくしょう』(1962、蔵原惟繕監督)などで知られる山田信夫の緻密な脚本を得て、成瀬監督はそれぞれの心の葛藤にまでメスを入れた、内面のドラマへと昇華させていった。そこに横溢しているのは、あっという間に崩れていく人間の生のはかなさであり、死の匂いである。東京から青森に舞台が移り、当初の深い憎しみが徐々に愛情に変わりはじめ、自らの理性と感情の相克に悩むという、難しい役柄を司葉子が好演し、彼女の代表作となった。映画がまだサイレントであった1930年に監督デビューし、その後87本もの作品を世に送った巨匠成瀬監督の遺作にふさわしい秀作である。

『めし』

出演:上原謙、原節子、島崎雪子、杉葉子 ほか

黒澤、溝口、小津に続く〈日本の四番目の巨匠〉として、今や世界中の映画批評家から熱い視線を受けるに至った成瀬巳喜男監督の代表作に数えられる作品。監督を〈世界のナルセ〉の地位に押し上げるに功のあったアメリカの映画批評家オーディ・ボックなどは、本作を成瀬作品のなかでもっとも好きな作品と語っている。結婚生活も5年が過ぎ、倦怠期を迎え始めた夫婦。そこに突然、夫の姪が転がり込んできたことから、単調だった二人の暮らしに思いもよらぬ波乱が生じはじめる。美男美女の主演二人が、本作ではともに中年にさしかかり、平凡で退屈な男と所帯やつれした女になったさまを、見事に好演している。原作は林芙美子による未完の新聞連載小説。その結末を含め、脚色を委ねられた田中澄江と井手俊郎の良質な叙情と煥発する才気とが美しく調和し、繊細極まりない成瀬の演出と玉井正夫の撮影のなかに開花している。

主  催:

(公財)廿日市市芸術文化振興事業団、国立映画アーカイブ

特別協力:

廿日市市文化協会、文化庁、(社)日本映画製作者連盟、全国興行生活衛生同業組合連合会