公益財団法人 廿日市市芸術文化振興事業団│懐かしの映画上映会
「黒澤 明監督特集」

ウッドワンさくらぴあ
0829-20-0111
はつかいち美術ギャラリー
0829-20-0222
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌平日)

公演詳細

懐かしの映画上映会
「黒澤 明監督特集」
開催日
2022年11月10日(木)
開演時間
【各回完全入替制】
※開場は各上映開始時間の20分前
10:00~12:23「天国と地獄」
13:10~15:00「用心棒」
15:30~17:20「わが青春に悔なし」
17:50~19:28「酔いどれ天使」
会場
ウッドワンさくらぴあ 大ホール
料金

全席自由(税込) 1回券500円、4回券1,500円
※4枚券は4枚綴りになっております。
複数人で分けても使用できます。
※さくらぴあ倶楽部会員100円引(2枚まで)。
※高校生以下無料(入場の際学生証をご提示ください)。
※ポイント対象外。ウッドワンさくらぴあオンラインチケットでの取扱いはありません。
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※客席内での飲食は出来ません。予めご了承ください。

チケット発売日
会員・一般 8月21日(日)

⼈間の善と悪、⼤胆な構成と躍動感あふれる演出で描き続け、世界中の映画⼈と観客を魅了した「世界のクロサワ」黒澤明監督の傑作を、ウッドワンさくらぴあ大ホールでゆっくりご鑑賞ください。

『天国と地獄』

[1963年 東宝=黒澤プロダクション/143分(白黒)]
出演:三船敏郎、仲代達矢、香川京子、三橋達也 ほか

この作品は、アメリカの推理作家エド・マクベインの「キングの身代金」を映画化したものであるが、連れ去る子供を取り違えたとしても、その犯人の脅迫は成立するとのヒントを借りただけで、ほとんどのトリックは黒澤をはじめとする脚本家たちのアイディアである。この映画のクライマックスは二つある。一つは特急こだまのトイレの窓から身代金の3000万円を投げ出す場面。これは実際運行される車両を借り切って、数台のカメラで同時間に撮影された。もう一つは、極刑を課すために犯人を泳がせ、新たな殺人現場におびき出す場面である。『用心棒』(1961)や『椿三十郎』(1962)で、これまでの時代劇にはなかった迫力を演出した黒澤であったが、この作品でも、サスペンス映画に斬新な演出を試みている。〈天国〉に住む富豪と対照的に〈地獄〉に住む青年医師を演じた山崎努は、文学座の新人俳優であったが、この作品で一躍注目を浴びた。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

『用心棒』

[1961年 東宝=黒澤プロダクション/110分(白黒)
出演:三船敏郎、仲代達矢、司葉子、山田五十鈴 ほか]

ダシール・ハメットのハードボイルド小説『血の収穫』を大胆に翻案、西部劇の手法を取り入れながら、三船敏郎演じる浪人の痛快無比な姿を描いた黒澤明による大ヒット時代劇。舞台は上州、かつて絹市で栄えた宿場町も、今や跡目を巡る清兵衛一家と丑寅一家との抗争で、無法地帯と化していた。見回りの役人も、賄賂片手に見て見ぬふりの始末。そんな宿場に流れ着いた凄腕の浪人、自称・桑畑三十郎は、居酒屋の親父に一部始終を聞かされ、両家の親分に自ら用心棒として売り込みながら、彼らを手玉に取っていく。喧騒のさなか、狂犬のような丑寅の弟・卯之助が町に戻ってきた…。撮影は、東宝撮影所横の農地に巨大なオープンセットを建て、『羅生門』(1950年)以来の黒澤組となった宮川一夫キャメラマンが、複数のキャメラと望遠レンズを駆使し、シネマスコープの画面を意識した見事なフレーミングで、比類のない娯楽活劇に仕立て上げた。黒澤は翌年、続篇となる『椿三十郎』を発表。海外でも評判を呼び、盗作騒ぎも起きた『荒野の用心棒』(1964年、セルジオ・レオーネ監督)は、主演クリント・イーストウッドをスターへと押し上げるとともに、イタリア製西部劇(マカロニ・ウェスタン)のはしりとなった。本作の成功により、黒澤は世界のKUROSAWAの位置を不動のもとにした。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

『わが青春に悔なし』

[1946年 東宝/110分(白黒)]
出演:原節子、藤田進、大河内伝次郎、杉村春子 ほか]

黒澤明監督の戦後第一作。モデルとなったのは京都大学の滝川事件(1933)とゾルゲ事件(1941)だが、後年の男性中心の黒澤作品に比べるとやや異質な感じを与えるのは、女性が主人公である点であろう。ファシズムの圧力に屈し野に下った大学教授の娘で、戦時下のさまざまな苦境にも屈することなく生きていく堂々たるヒロインとして、原節子が後の小津安二郎作品とは違った魅力を発揮している。脚本の久板栄二郎はプロレタリア演劇の中心的存在として活躍していた劇作家で、この年木下惠介監督も、久板の脚本により『大曾根家の朝』という佳作を発表しているが、彼と組んだところに当時の黒澤監督の姿勢が表われている。ともあれ、戦後の「新しい時代」の高揚の中で製作されたことが良くわかる作品である。本作は、1946年3月から始まった東宝争議の第二次争議中に、日活系の劇場を使って封切られた。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

『酔いどれ天使』

[1948年 東宝/98分(白黒)]
出演:志村喬、三船敏郎、山本礼三郎、木暮実千代 ほか

戦時中、『姿三四郎』(1943)で鮮烈なデビューを果たした黒澤明監督は、戦後も『わが青春に悔なし』(1946)や『素晴らしき日曜日』(1947)の成功で、日本映画の若きエース的存在となった。「キネマ旬報」ベストワンに輝いた黒澤の7作目にあたるこの作品は、闇市のヤクザと飲んだくれの貧乏医者との、不思議な友情と葛藤を描いたもので、強烈な個性を持つ若者とその観察者の設定や荒々しい映像表現の顕著さという点で、以後の黒澤映画のスタイルを決定づけたものと言える。前年に、谷口千吉監督の『銀嶺の果て』(黒澤脚本)でデビューしたばかりの三船敏郎が黒澤に初めて起用され、野生味あふれるその個性をいかんなく発揮し、以後の黒澤作品に欠かせぬ存在となったことは周知の通り。また、映像と音との対位法的表現(雑踏の中の〈カッコー・ワルツ〉の使用やギター曲〈人殺しの歌〉など)を試みた黒澤にとって、この作品から参加した音楽家早坂文雄との出会いも幸運であった。

[主催]

(公財)廿日市市芸術文化振興事業団、廿日市市文化協会、国立映画アーカイブ

[特別協力]

文化庁、(社)日本映画製作連盟、全国興行生活衛生同業組合連合会、(株)松竹